shasetu’s diary〜新聞5紙の社説を要約〜

新聞5紙の社説を要約し、読み比べできるようにしました

令和3年8月3日の社説

朝日新聞

「桜」不起訴不当 安倍氏は喚問で説明を』

検察審査会が安倍前政権下の「桜を見る会」を巡る問題で、不起訴の一部を不当と議決した。東京地検特捜部は判断を重く受け止め、徹底した再捜査を行わなければならない。秘書らが政治資金規正法違反の罪で略式起訴されたが、安倍氏は知らなかったと釈明していた。議決では首相まで務めた政治家が、関知しないというのでは、「国民感情として納得できない」とし、「説明責任を果たすべきである」と指摘。やはり、ウソをつけば偽証罪に問われる証人喚問で安倍氏に真相をただすしかあるまい。与党は閉会中審査に応じるべきだ。

ミャンマー 暫定政府はまやかしだ』

ミャンマーで2月にクーデターを起こした国軍が、暫定政府を発足させた。再来年の8月まで総選挙を行うとし、民主体制への意向を示し国際社会からの非難を和らげたい思惑だ。これまで、国軍により940人の市民が殺害されている。クーデターによる経済低迷にコロナ禍が重なり、市民の生活には支障が出ている。背景には公務員や医療従事者の不服従運動による職場放棄があるが、多くの市民は運動を指示する。日本政府は、市民生活への影響も配慮しつつ、ODAの全面停止など制裁の強化を模索すべきだ。

産経新聞

『クーデター半年 国軍の暴走を放置するな』

ミャンマでクーデターを起こした国軍に対し、国連安全保障理事会東南アジア諸国連合ASEAN)が有効な手を打てずにいる。国軍設置の選挙管理委員会は7月26日、アウン・サン・スーチー氏率いる国民民主連盟(NLD)が大勝した昨年11月の総選挙で、NLDに不正があったと断定し、無効を発表した。国連安保理が強い措置に出ないのは、中国とロシアが反対しているからだ。安保常任理事国として無責任極まりない。さらに「自由で開かれたインド太平洋」構想を掲げる日本の顔が、ミャンマー問題では一向に見えない。言語一致の外交を展開してもらいたい。

『「記述式」断念 教育内容の改革が必要だ』

萩生田光一文部科学相が、有識者会議の提言を受け、大学入学共通テストでの記述式問題と英語民間試験の導入を断念することを正式表明した。知識偏重の1点刻みのテストからの脱却を掲げた改革の柱にしていたが、採点制度や受験機会の公平性などに問題があると指摘され、今年の導入を見送っていた。有識者会議は、「理念や結論が過度に先行し、実務的な課題の解決に向けた検討が不十分にならないようにする必要がある」と戒めた。文科省や大学は、入学後のカリキュラムなど教育内容改善に力を注いだらどうか。

東京新聞

『 益川さんを悼む 平和訴え続けた科学者』

素粒子研究でノーベル物理学賞を受賞した名古屋大特別教授・京都大名誉教授の益川敏英さんが亡くなった。平和運動にも熱心に取り組む一面があった。益川さんが際立ったのは、相次ぐ「平和」や「反戦」への発言と、「学問の独立」への毅然とした態度だった。受賞以前に設立された「九条科学者の会」の呼びかけ人の一人で、護憲の立場を強く訴えた。日本学術会議の会員候補任命拒否問題には、「学問の自由が奪われれば、科学は政治の召し使いになる」と批判。権力への「忖度」とは対極にある益川さんの生き方を深く心にとどめ続けたい。

『五輪と平和 戦場にも思いをはせたい』

国連総会決議に基づく「五輪休戦」中だが、世界では戦火がやまない。東京五輪開会式では一九七二年のミュンヘン五輪開催中に殺害されたイスラエル選手・コーチら十一人への黙祷が捧げられた。国連総会は、加盟国に恒例の五輪休戦を呼びかけたが、イエメンなどでは戦火が続く。かねて五輪は政治や国際紛争から自由ではなかった。「平和の祭典」は現実離れしているが、理想としての意味はある。世界各地の戦場に思いをはせる機会として五輪を位置付け直せないものだろうか。

毎日新聞

『国境炭素税と日本 公平なルール作り主導を』

温室効果ガスの排出規制が緩い国・地域からの輸入品に「国境炭素税」を、欧州連合EU)が2026年に導入する。EUの進める排出規制強化は、規制が甘い国への企業移転を誘発しかねない。自国産業を守りつつ、財源を得る効果も期待される。課題は、保護主義的な貿易への懸念と、透明性の確保だ。そして、脱炭素で遅れる途上国側の反発もある。各国が納得する仕組みが求められる。日本は国内の制度整備も急務だ。長期的な視点で、戦略を立てる司令塔を定め、対策を進めなければならない。

ミャンマー政変から半年 国際社会が圧力強める時』

ミャンマーの国軍によるクーデターから半年。この間、国軍に殺害された市民は940人に上り、7000人近くが逮捕された。拷問も行われているという。国軍は、昨年総選挙を無効と宣言し、2023年8月までに総選挙を実施するという。国軍系政党に勝たせ、形ばかりの民政移管を演出しようとしているようだ。国際社会は、有効な手を打てずにいる。経済、軍事両面でミャンマーと関係が深いロシアと中国の反対で、国連安全保障理事会は強い措置を取れていない。日米中露など周辺諸国を加えて開かれる外相レベル会合を通じ、事態打開への糸口を探るべきだ。

読売新聞

『アフガン情勢 タリバン復権を許すのか』

米軍撤退後、タリバンがアフガン政府の治安部隊に対する攻勢を強め、国土の半分以上を統制下に置いた。タリバンは、2001年米同時テロの首謀者をかくまった疑いで米軍から攻撃を受け、一度は崩壊した。タリバン復権は、再びアフガンをテロの温床と化すことにつながりかねない。タリバンは、イスラム法を厳格に解釈した人権軽視の統治を基本とする。バイデン政権のシナリオは甘いものとの非難は免れない。タリバンへの接近をすすめる中国とロシアは、関係伸展を米国との覇権争いの道具にするのではなく、地域安定に活用しなければならない。

『政府の財政試算 楽観的予測では健全化遠のく』

このほど内閣府が中長期の財政試算を発表した。2027年度には黒字に転じるという見通しだ。試算における経済成長率は名目で3%を超えると予想し、それによって税収が伸びるとする。ただ、近年、日本の潜在成長率は1%にも満たない。与党内では、次期衆院選に向け、大規模経済対策を求める声が強まっている。楽観的な見通しが、財政規律を緩めることにつながる問題は大きい。政府は基礎的財政収支黒字化の達成時期について、年度内に再検証するとしているが、それを機に歳出・歳入改革の方策を打ち出すことが不可欠だ。