shasetu’s diary〜新聞5紙の社説を要約〜

新聞5紙の社説を要約し、読み比べできるようにしました

令和3年8月8日の社説

朝日新聞

外来生物 実行ある規制の強化を

環境省が、アメリカザリガニやアカミミガメ(ミドリガメ)を「特定外来生物」に指定する方向で、検討を始めた。生態系や人間の生命・身体、農林水産業に被害を与える恐れがある生物で、飼育や売買も禁じられ、違反すると懲役や罰金を科される。今回は、輸入や販売、放出を禁じつつ、ペットとしての飼育は認める方向で議論が進んでいる。社会全体で生物に関する正確な知識を持つ必要がある。地域振興に本来生息しないホタルを放つといった行為も認められない。希少生物や生態系を守る地域を決めて管理する他なく、国はその地域の自治体・住民をしっかり支援してもらいたい。

産経新聞

東アジア外相会議 中国の弾圧はデマではない

東アジアサミット(EAS)外相会議で、日本や米国が、中国政府による香港、新疆ウイグル自治区での人権侵害を批判した。それに対し中国は内政干渉と反発。茂木敏充外相の「深刻な懸念」との表明に、中国の王毅外相は「中国内部のことに口出ししてデマを飛ばし、国家主権の平等という原則を破壊した」と非難した。人権や基本的自由は人類普遍の価値で、弾圧に対し声を上げるのはもっとものことだ。日米は、中国の南シナ海への海洋進出にも反対を表明した。日米は、中国政府の不当な振る舞いを指弾し続けなくてはならない。

議員事務所捜索 公明は説明責任を果たせ

東京地検特捜部が、公明党の2人の衆院議員の議員会館事務所や同党の遠山清彦衆院議員が代表を務めるコンサルタント会社を家宅捜索した。2議員の秘書と元秘書が、貸金業の登録を受けず金融機関の融資を仲介した疑いがある。党は「クリーンな政治」を標榜し、政治とカネの問題に厳しい姿勢をとってきたはずだ。自浄作用は選挙対策というより政治倫理を正すために必要だ。人権をめぐる問題でも公明の対応には疑問符がつく。公明は、人権の尊重、政治倫理の確立の看板を下ろす瀬戸際にいるという危機感を持ち、原点に返る必要がある。

東京新聞

週のはじめに考える なぜ日記を書くの?

夏休みの公園。子どもたちが「なぜ日記を書かなきゃいけないの?」と会話していました。今から八十年前の一九四一(昭和十六)年、太平洋戦争開戦。愛知県豊橋市豊橋中学に、左右田年秋という背が高く、スーツが似合うかっこいい先生がいました。三学期のある月曜、先生はあちこちにガーゼとばんそうこうを貼り、右のほほからまぶたが腫れ上がっています。先生は何も言いませんが、憲兵隊にやられた、という話が広がります。生徒の一人の鈴木拓郎さんは、けがをしてもいつも通り学校に来た先生の姿に、誰にも負けない強い気持ちを見た、と思いました。やがて鈴木さんは学校の先生になり、九十六歳の今年一月、自分の思い出などを書いた「こしかたゆくすえ」と題する冊子を出しました。その中の一文「左右田先生とケンペイタイ」では、今も忘れない先生の思い出を、詳しく述べています。それを私たちの仲間の川合道子記者が、記事を書きました。もしも鈴木さんが戦争中の体験を、そして川合記者が記事を書かなかったら。戦争時代の恐ろしいできごとを知る手がかりの一つが消えていたかもしれません。書くことの大きな理由の一つは「決して忘れないため」です。ものごとをきちんと記録し、しっかり残す姿勢を身につけるためにも、家や学校であったことや感じたことを、短くてもいいので、夏休みに限らず毎日書いてみてください。

毎日新聞

ベラルーシ選手の亡命 独裁が汚した五輪の理念

東京オリンピックに参加していた陸上女子のベラルーシ代表、クリスツィナ・ツィマノウスカヤ選手がポーランドに亡命した。種目変更を通告された不満をSNSに告発したところ、帰国を命じられたという。ベラルーシのルカシェンコ大統領は、スポーツに資金を投じているのにメダルが取れていないと、選手やコーチを非難していた。ベラルーシ当局は、反政府デモが起こるたび、徹底的に弾圧してきた。五輪憲章は「スポーツをすることは人権の一つ」とうたう。その理念に反する行為を続けてきたベラルーシに、IOCや国際社会は毅然とした態度を取るべきだ。

脱炭素の行動計画 危機感の共有が不可欠だ

温室効果ガス排出を減らす行動を企業や家庭に求める政府の計画案が公表された。省エネ家電や設備の導入、ビルや住宅の省エネ化に加え、電気自動車や太陽電池パネル、LED照明の活用などを促す。家庭部門の削減率は、現計画の39%から66%に大幅に上積みされた。省エネ家電などの購入は、費用がかかるため、政府は支援策を示すべきだ。産業界の行動を促すには、「カーボンプライシング」の導入も有効だろう。再生可能エネルギーの割合を高めることも重要だ。目標達成に、国民、企業、行政が一丸となり、温暖化への危機感を共有することが何よりも大切だろう。

読売新聞

介護人材不足 働きやすい職場作りを急げ

厚生労働省は2040年度に、介護職員が280万人必要になると推計した。人手不足は、職員の負担が重くなり、離職を招くという悪循環が生じやすい。課題を先送りせず、介護分野で働く人を増やす施策を着実に講じていくべきだ。給与をはじめ、職員の処遇を改善することが急務である。限られた人材を有効に活用する観点も必要だ。離職した介護福祉士に再度就職してもらうなど、人材の掘り起こしも進めたい。厚労省は、都道府県に、働きやすい介護事業所を認証する仕組みの導入を求めている。職場改革を促すことにつながるだろう。

ドイツの大洪水 「脱炭素」への傾斜を強めるか

ドイツ西部とベルギーなどで7月中旬、豪雨による洪水で、多くの人が命を落とした。比較的自然災害が少なかったことから、国民に衝撃を与えている。ドイツのメルケル首相は被災地を視察した際、異常気象と温暖化の関連を指摘。ドイツではもともと、気候変動や温室効果ガスの排出削減策への関心が高い。9月の総選挙では、環境政党緑の党の政権入りが有力視されている。ドイツは、環境保護と産業界の競争力のバランスをとりながら、気候変動対策を定めてきた。11月の気候変動枠組み条約締約国会議(COP)に向け、建設的な議論を主導してほしい。