shasetu’s diary〜新聞5紙の社説を要約〜

新聞5紙の社説を要約し、読み比べできるようにしました

令和3年8月4日の社説

朝日新聞

『熱海の土石流 「国土を測る」を着実に』

静岡県熱海市で起きた土石流災害の解明に測量データが貢献している。問題となった不適切な盛り土について、詳細な標高データがあったため、土が運ばれた前後、そして災害後の状況を比較することができた。熱海のようにデータ揃っている地域は稀である。災害の危険度が高いところや、開発で変化が大きかった場所はデータ更新の頻度を高めるなど、着実に利用・提供できるよう人員や経費の確保に努めてほしい。

入院方針転換 「自宅急変」に備え急げ

コロナ感染者が急増する地域では、重症者か重症化する恐れが高い人に限り、中等症でもリスクが高くない場合は自宅療養を基本とする方針を政府が打ち出した。限られた医療資源を重症者から提供するためだ。ただ、コロナの特徴は軽症と判断されても、急変する場合がある。これまで楽観論を振りまいてきた菅首相小池都知事の責任は重い。政府は春以降、病床と療養施設の確保に取り組むとしてきたが、実現できないままこの状況に至った。根拠なき楽観主義と場当たり的な対応から決別しなければ、事態は悪化するばかりだ。

産経新聞

『五輪のおもてなし 最後まで熱戦を支えたい』

東京五輪に参加する海外選手たちが、日本が提供するホスピタリティーの高さを評価している。自動走行の電動バスや衛生管理を徹底した食堂、24時間体制の警備による治安の良さなど、SNS上に好意的な声が寄せられている。「おもてなし」は、招致の際に日本が世界に掲げた公約だ。選手らはコロナ禍の厳しい環境化でも、日本側の歓待に笑顔で応えてくれる。ホスト国として感謝を忘れてはなるまい。選手らに「五輪が東京でよかった」という思い出を持ち帰ってもらうためにも、「おもてなし」の気持ちを忘れず、大会を支え続けたい。

『コロナの新治療薬 在宅患者向けにも工夫を』

7月に特例承認された新治療薬「抗体カクテル療法」が、新型コロナの新たな治療法の重要な布石になるだろう。入院や死亡のリスクを7割程度下げる効果が期待される。重症化リスクのある患者に使う想定だが、問題は、該当患者に確実かつ適切に投与できるかだ。入院患者を対象と想定しているが、それでは不十分だ。政府は重症や重症化リスクの高い患者を優先的に入院させる方針を示している。入院に限らず、発熱外来や訪問診療などで使えるよう工夫すべきだ。新治療薬の使用でワクチン接種のような不手際があってはならない。

東京新聞

『介護職員の不足 待遇改善を抜本的に』

厚生労働省が、高齢者を介護する職員が二〇四〇年度には約七十万に不足する見通しを示した。なり手不足が顕著である。介護職は、人命を預かる精神的負担が大きい上に勤務時間が不規則で力仕事が多いわりに、それに見合う賃金水準に達していないことも、敬遠される大きな原因だろう。処遇改善のために介護報酬を引き上げれば、介護保険料や利用者の自己負担増につながる。ある程度の負担はやむを得ないが、介護報酬とは別に、公費投入の仕組みも検討が必要ではないか。少子化に伴い家族だけでは介護はますます厳しくなり、介護職員はより必要な存在だ。

『五輪と福島 「復興」掛け声だけでは』

五輪・パラリンピックの競技会場が林立する東京都江東区で、福島からの避難者たちが住まいを追われかけている。「復興五輪」の理念を実現していない。福島県は、国家公務員宿舎・東雲受託に住む三十四世帯に立ち退きを迫り、応じなければ法的措置を取るという文書を送付した。いずれも避難指示区域外からの避難者だで、二〇一七年に無償提供が打ち切られ、現在は通常家賃の二倍を請求されている。五輪本番でも福島に光が当たる場面はわずかだ。原発事故からの復興は、被災者に寄り添いながら時間をかけて取り組むしかない。

毎日新聞

『熱海土石流から1カ月 盛り土の規制強化が急務』

22人が死亡し、5人が行方不明のままの、静岡県熱海市で発生した土石流災害から1カ月がたった。これまでの県の調査から、「人災」の疑いも浮上している。崩落した土砂の大半は盛り土で、総量は市への届出の2倍、高さは県条例で定める上限の3倍以上と推定される。行政側が条例違反をなぜ見過ごしたのかなど、徹底解明が求められる。今回のような残土処分の盛り土には、各自治体の条例が適用させるが、規制内容にはばらつきがある。罰則規定もまちまちだ。全国一律で規制する法律を早急に整備すべきだ。

『コロナの入院制限 患者切り捨てにならぬか』

新型コロナウイルスの感染者が急増している地域で、入院対象者を制限する方針を政府が示した。制限は中等症のうち、重症化リスクが低い患者が対象で、医師らの判断で自宅療養に切り替える。コロナは症状が急変するケースも多数。専門家は、変異株で患者が急増する可能性を以前から指摘していたが、政府の対応は遅れた。ワクチン頼みの楽観的な姿勢で、医療体制の拡充を怠ったツケが回ってきているのではないか。政府はこの事態を認め、方針転換の目的と課題を丁寧に国民へ説明しなければ、理解は得られない。

読売新聞

ミャンマー情勢 国際社会は軍の増長を許すな』

ミャンマー軍のクーデターから半年、軍の意思決定機関「国家統治評議会」がミン・アウン・フライン最高司令官を首相とする暫定政府の発足を発表した。昨年、民主派政党が圧勝した総選挙を無効とし、2023年8月までに改めて総選挙を行うという。コロナ禍で、軍が医療用酸素などを抱え込み、多くの市民が適切な医療を受けれず、避難民向けの支援物資も軍が妨害し届かいない。人道危機状態を放置してきた国際社会の責任は大きい。日米欧は制裁に後ろ向きな中露も巻き込んだ形で軍に圧力をかけ、ミャンマー国民を支援すべきだ。

『コロナ自宅療養 症状の急変に対応できるのか』

政府は、入院を重症者や重症化の恐れが強い人に限定し、中等症者や軽症者は自宅療養を原則にするという。自宅療養で家族への感染を防ぎながらの療養は難しいだろう。重症化の判断は難しく、手遅れになる懸念もある。病床確保の重要性は以前から指摘されてきたが、これまでの政府や自治体の取り組みは、不十分だったのは明らかだ。政府はこれまで、人口比で全国にワクチンを配布してきたが、感染拡大の中心地への傾斜配分も必要ではないか。その場しのぎの対応の繰り返しでは、コロナ収束は見通せない。