shasetu’s diary〜新聞5紙の社説を要約〜

新聞5紙の社説を要約し、読み比べできるようにしました

令和3年8月1日の社説

朝日新聞

『五輪折り返し 安全・安心を見直して』

五輪が折り返し地点を過ぎた。問題は、選手が持てる力を存分に発揮できる環境を、主催者側が物心両面で整えることだ。自分の力ではどうしようもない理由で制約を受ける選手が増えないよう、今後も感染対策に万全を期さねばならない。ウイルスが国内に入ること、そして外に広がることを防ぐという約束はどこまで果たされているか。酷暑対策も不手際との批判を免れない。アピールポイントだった運営能力や大会の理念そのものに疑問符がつくことが、開会後も相次ぐ。主催者の姿勢と責任は最後まで問われ続ける。

産経新聞

熱中症とコロナ 万全の警戒で医療を守れ』

熱中症で救急搬送される人が増える時期である。医療現場は今、新型コロナウイルスの感染拡大で、崩壊の危機に瀕している。熱中症は自らの心がけで防ぐことができる。日中はできるだけ外出を控え、暑さを避けて過ごす。距離を2メートル以上とれるときはマスクを外す。水分と塩分を適切に補給する。リスクが高い高齢者や小児には目を配りたい。このような心がけで、新型コロナの最前線で戦う医療職に対する、ささやかな協力を惜しんではならない。

『金メダル最多 量産の背景冷静な分析を』

日本の金メダル獲得が、史上最多となった。海外勢の調整不足が指摘されている。対照的に日本勢は大会期間中も強化拠点に宿泊するなど、万全なサポートを受けて競技に臨んでいる。「地の利」がもたらした金メダルとしても、結果を出した選手たちを称えたい。日本勢の躍進には、国からの強力な支援と、国とスポーツ界の連携がある。戦略の勝利と言っていい。これを一過性の成果に終わらせず、社会でのスポーツの位置づけ、価値を国民に示し、競技団体へ長期的な支援の枠組みを構築していくべきだ。

東京新聞

『週のはじめに考える 半年前に戻ってほしい』

ミャンマーの国軍がクーデターで国民民主連盟(NLD)から無理やり政権を奪取したのは、二月一日。半年で九百人を超す市民が国軍の銃撃に倒れ、五千人以上が拘束されています。NLDや少数民族などが挙国一致政府(NUG)を結成するも、国家運営は国軍の手中にあり、国民は銃声に怯え続けています。コロナ禍で連日千人超が死亡し、医療は崩壊。最大都市ヤンゴンなどの路上には、感染者が溢れています。祖国の状況に水泳男子アスリート、ウィン・テット・ウーさんが国軍に抗議し、東京五輪をボイコットしました。五輪出場が確実だったものの、四月に参加拒否を表明しました。ウーさんは国軍に射殺された当時十九歳の女子テコンドー選手チェーズィンさんの死を悼んでいます。彼女は抗議活動に加わり、射殺される三日前には「わが身を反軍運動にささげる」とのメッセージを残しています。ウーさんは「アスリートには高度なパフォーマンスだけではなく、高い倫理観も求められるのです」と話します。「民主的なNUGをミャンマー政府として承認してほしい」。それが日本への期待です。「四年後のパリ五輪で、自由で民主的な祖国の代表選手になりたい」。ウーさんのこの願いをなんとかしてかなえてあげたいものです。

毎日新聞

東証の市場再編 経営の質を高める契機に』

来年4月、東京証券取引所は、大企業向けの「プライム」、中堅企業向けの「スタンダード」、新興企業向けの「グロース」の3市場に再編する。各市場の位置づけを明確にし、投資を呼び込む狙いだ。現在、東証全体の上場企業の約6割が一部に上場している。業績不振や時価総額が小さいなど、海外投資家から企業価値の見極めづらさが指摘されている。企業は、「プライム上場」という看板やプライドにとらわれず、規模や体力に見合う市場を選ぶことだ。再編を成功させなければ、海外との競争には生き残れない。

東京五輪の前半戦 無観客でも伝わった健闘』

東京五輪が開幕し1週間。新型コロナウイルス感染対策で選手や関係者の行動が厳しく管理される異例の大会となった。不自由な環境の中、ストレスから試合棄権した選手もいた。将来の五輪像を、新競技に垣間見るシーンがあった。仲間と勝負を楽しむ自由な雰囲気を感じさせた。テレビ観戦でも選手の健闘ぶりは十分伝わる。感染が急拡大している中、引き続き感染防止のルールは徹底しなければならない。

読売新聞

「桜」不起訴不当 検察は再捜査に全力を尽くせ』

桜を見る会」の前夜祭を巡り、東京第1検察審査会は安倍前首相を不起訴処分としたことに、不起訴不当と議決した。会費の不足分を安倍氏側が補填した問題に、捜査が不十分で納得がいかないと指摘。検察は、参加者に寄付を受けた認識がないと判断し、安倍氏を不起訴としていた。安倍氏は国会で、事実と異なる答弁を計118回していたという。不誠実な答弁が国民の疑念を招いたのではないか。後援会関係者を多数招き、「公私混同」との批判もあった。政治家は、国民から厳しい視線が注がれていることを自覚し、襟を正すべきだ。

『子供とコロナ 大人が注意して感染を防ごう』

厚生労働省によると、昨年は1割を下回っていた20歳未満の感染が、今年3月以降は1割以上に増加した。厚労省の研究班によると、子供の感染経路の7割は家庭内で、そのうち父親からが半数近くを占めた。周囲の大人が基本的な感染予防対策を徹底することが肝要である。幼い子供は体調変化を正確に伝えられないため、状態を良く見て、早めに医療機関を受診すべきだ。さらにコロナ禍の長期化で、精神的なストレス下にあることも心配だ。よく眠れないなど、子供のSOSを受け止めることが大切だ。