shasetu’s diary〜新聞5紙の社説を要約〜

新聞5紙の社説を要約し、読み比べできるようにしました

令和3年7月31日の社説

朝日新聞

『宣言地域拡大 根拠なき楽観と決別を』

新型コロナの感染拡大により、政府は東京、沖縄に加え、埼玉、千葉、神奈川、大阪に緊急事態宣言地域を拡大すると決めた。ワクチン接種が各世代に行き渡るにはまだ時間がかかる。世界で猛威を振るうデルタ株の感染力の強さに、ワクチン接種が進む国でも対応に苦慮している。東京に宣言が出されて2周間経過したが、効果はみられない。これまでの判断に誤りがあれば認め、根拠なき楽観を廃止し、国民に協力を求めるときだ。首相はその先頭に立つ覚悟があるか、問われている。

『コメ先物上場 不透明な議論を改めよ』

2018年からコメの生産調整が廃止され、農家は需給を予想して生産量を決めるようになった。コメの先物取引は、価格変動リスクが避けられ、農家と流通業双方にメリットがある。農家の経営見通しも立てやすくなり、コメの安定供給につながる。大阪堂島取引所は本上場を申請したが、農水省は否定的な姿勢だ。看過できないのは、農水省自民党農水族議員と密室で議論しただけで、不認可の方向性が決まったことだ。不透明な政策決定過程を改めなければ、国民の農政不信は払拭できない。

産経新聞

『緊急事態拡大 宣言下の悪平等に陥るな』

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、首都圏と大阪、沖縄に緊急事態宣言が発令されている。期限は8月31日まで。北海道など5道府県には蔓延防止等重点措置が適用される。漫然と地域を拡大し、期限延長しても好転は望めない。宣言地域を対象に、ワクチンの優先接種を進めるべきだ。また、若年層のワクチン接種を促進するため、接種による何らかの特典を設けるのも一つの手である。バイデン政権は政府職員に接種を呼びかけるため、報奨金を出すよう州や市に呼びかけた。悪平等に陥っている場合ではない。

『五輪の難しさ 選手の奮闘に敬意を払う』

東京五輪での有力選手の苦戦が目に付く。過酷な状況で競技に臨む選手たちには、日本勢、海外勢を問わず深い敬意を表したい。4年に一度、あるいは一生に一度の舞台に立つため、選手たちは自己を厳しく律してきた。コロナ禍にも立ち止まらず、世界各地から東京に集ったこと自体に大きな意味がある。後半戦も、彼らの笑顔や涙に共感を寄せ続けたい。

東京新聞

「桜」不起訴不当 不信を拭う再捜査を』

桜を見る会」を巡る、安倍晋三前首相に対する検察審査会の判断は「不起訴不当」だった。検審制度は、検察の不起訴判断に対し、民意を反映させ、適性を図ることを目的とする。検察は再捜査に動き出す。「桜を見る会」前日の夕食会で、安倍氏側が補填した経費が寄付に当たるとして、公職選挙法違に反する疑いと、政治資金規正法違反の疑いだ。権力の私物化も目に余る。議決書に「政治家はもとより総理大臣であった者が、秘書がやったことだと言って関知しないという姿勢は国民感情として納得できない」とあり、多くの国民が突きつける怒りである。

『緊急宣言を拡大 危機感共有へ力を尽くせ』

政府が、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、四府県に緊急事態宣言を追加発令することを決めた。対策分科会の尾身茂会長は感染急増の要因として、コロナ慣れや自粛疲れ、デルタ株の増加、夏休みお盆期間、五輪開催を挙げた。菅義偉首相は、楽観論を振りまくだけで、それでは国民に危機感は伝わらない。政府は正確な感染状況と、拡大防止の対策、国民への協力要請などを示す必要がある。そして希望者全員がワクチン接種できるよう、確保と適正な配分に努めなければならない。

毎日新聞

安倍氏の不起訴「不当」 捜査徹底が検察の責任だ』

桜を見る会」前夜祭への安倍晋三前首相の関与を裏付ける証拠はないと判断したことに、検察審査会は「不当」と議決した。参加者の会費で賄えなかった部分を、安倍氏側が補填したことから、公職選挙法違反となる有権者への寄付に当たる疑いがある。東京地検特捜部は、真相を解明しなければならない。安倍氏にも説明責任が改めて問われる。検察審議会で「首相だった者が、秘書がやったことだと言って関知しないという姿勢は国民感情として納得できない」と付言されたことを、安倍氏は重く受け止めるべきだ。

『全国に広がる第5波 楽観改め対策立て直しを』

緊急事態宣言の対象地域が、埼玉や大阪など新たに4府県に拡大される。政府はワクチン頼みの楽観姿勢を改め、対策を立て直すべきだ。専門家は「危機感を共有できていないことが最大の問題」と指摘する。変異株の流行や、40〜50代の重症化が目立ちはじめ、医療体制の逼迫が懸念される。分科会の尾身茂会長は五輪の影響に言及し、「すべきことはすべて全力でやることが、政府や大会組織委員会の当然の責任だ」と述べた。菅義偉首相は率先して、責任を果たさなければならない。

読売新聞

三菱電機新体制 閉鎖的な風土を改められるか』

三菱電機は創立100周年という節目を迎え、新たな経営態勢を発足させた。新社長の漆間啓氏は、閉鎖的な企業風土を根本から改める重い課題に、着実に結果を出していくしかない。鉄道用車両用の空調設備で、30年以上にわたり、不正検査が行われていたことが問題となり、過労やパワハラによる社員の自殺なども明るみに出ている。上下関係が厳しく、モノが言えない企業風土が不祥事の原因だと指摘されている。各部門独立性が高いことが、社内の風通しを悪くしているとされる。組織体制の見直しも検討課題だろう。

『緊急事態宣言 緩みは五輪のせいではない』

東京五輪で日本勢の快進撃が続く。日本勢だけでなく、海外勢の奮闘にもエールを送りたい。一部では、新型コロナの感染拡大を五輪開催に結びつける意見があるが、筋違いだろう。度重なる緊急事態宣言による自粛の緩みやワクチン接種の遅れ、そして重症化しないと安易に考える若者の増加が問題だ。今大会は、感染防止を最優先し、大半は無観客で行われている。これまで、競技会場や選手村で大きな集団感染は起きていない。今後も移動制限などを徹底し、五輪から感染を広げることがないようにしてもらいたい。