shasetu’s diary〜新聞5紙の社説を要約〜

新聞5紙の社説を要約し、読み比べできるようにしました

令和3年7月22日の社説

朝日新聞

『日韓会談見送り 対話の流れ強め打開を』

韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領の、東京五輪開会式に合わせた来日が見送られた。事前協議が整わなかった。在韓日本大使館の公使が韓国側を揶揄した不適切発言も水を差した。徴用工と慰安婦問題の韓国の司法判断に、行政府で対処する政治判断を示すべきだ。文氏は今年に入り、関係改善を訴えている。一方、菅義偉首相の朝鮮半島政策全般に対する意欲は感じられない。東アジアの懸案事項を共有する両国首脳は、対局を見据え、不毛な対立から脱するべきだ。

『30年電源構成 原発維持は理解できぬ』

経済産業省が、政府の次期エネルギー政策の素案で、再生エネルギーを「最優先」と明記し、2030年度には割合を36〜38%にする目標を示した。一方、原子力は20〜22%に据え置く。目標達成には原発27基を稼働率8割での運転が必要となる。原発は安全対策コストが高く、安い電源とは言えない。まずは脱炭素社会実現への電源構成を示すことだ。主役は、現時点で再エネしか考えられない。検証・修正を重ねn柔軟に進める態勢を整えてこそ、脱炭素社会への早道だ。


産経新聞

『エネルギー計画案 安定供給果たせるのか 原発の新増設から逃げるな』

経済産業省が政府のエネルギー政策の指針となる「エネルギー基本計画」の改定素案をまとめた。2030年度の電源構成は、再生エネルギーを4割近くまで引き上げ、化石電源は約4割に減らし、原発は2割を維持する。再生エネを主力電源と位置づけた。しかし、再生エネは安定供給に不安が残る。脱炭素電源で安定供給できる原発を活用していくには、建て替えや新設なども国を挙げて明示すべきだ。政府・与党には理想論ではなく、現実的な政策の議論を進めてほしい。

 

東京新聞

『海の日に考える 私たちにできること』

リヤカーを引き、ポイ捨てのゴミを拾う「リヤカーボランティア」は、豊橋中央高校(愛知県豊橋市)の伝統行事になりました。自分の足で歩き、手で拾う。昨年まで生徒会顧問を務めた権田拓郎教諭(48)は「ひとごとではなく自分ごと。あれは自分たちのごみ。だからやめられないんじゃないのかな」と話します。生徒の一人が言いました。清掃後の海岸で「おれたちには、こんな豊かな海があるんだなぁ。やっぱやるっきゃないじゃん」と。

 

毎日新聞

『コロナと熱中症 感染対策との両立が必要』

全国で梅雨が明け、最高気温が35度以上の猛暑日が続く中、熱中症への警戒が必要だ。新型コロナウイルスへの感染を防ぐため、外出を控える生活が続き、体が暑さに慣れていない人が多い。マスクも体に負担をかける。高齢者、子どもたちといった「熱中症弱者」に目を配りたい。環境省気象庁は今年度から、「熱中症警戒アラート」の運用を始めた。感染症熱中症の患者が同時に増えれば医療体制が逼迫する。二つのリスクに対処し、夏を乗り切りたい。

『かすんだ「復興五輪」 被災地の思いを忘れずに』

東京オリンピックの開会式に先立ち、福島県ソフトボール宮城県で女子のサッカーが行われた。「復興五輪」の看板は、新型コロナウイルスの感染拡大でかすむ。五輪の工事優先により、人手不足や建設資材の高騰が起こり、復興の足かせとなった面もある。スポーツが復興に果たしてきた役割は忘れてはならない。震災から10年、復興は途上である。被災地に光を与えるスポーツの力に期待したい。

 

【読売新聞】

『中国を一斉非難 悪質さが際立つサイバー攻撃

中国政府がハッカー集団を雇い、サイバー攻撃を行っていることが明らかになった。ハッカー集団は、中国当局に保護されている可能性が高い。先端技術などが盗まれたり、発電所などのインフラが狙われたりといった事態が起こる前に、サイバー犯罪の取締強化やサイバー防衛の整備などを急ぎ、阻止すべきだ。法整備が必要ならば、国会で議論を尽くし、改善策を講じる必要がある。

『エネルギー計画 「数字合わせ」で終わらせるな』

政府は、新たなエネルギー基本計画の原案を有識者会議に示した。2030年度の電源構成は、再生エネルギーが36〜38%、火力発電が41%、原子力は20〜24%とした。再生エネ比は19年度の18%から約2倍となるが、その根拠が乏しい。太陽光は適地が残り少なく、政府は荒廃農地や公共施設などで拡大を目論むものの、それでは足りないとの見方が大勢だ。安定供給が可能で脱炭素電源の原発再稼働を政府が責任を持って後押し、新増設の議論も早期に始めるべきだ。

令和3年7月21日の社説

朝日新聞

『通学路事故 子どもの命、守る責任』

千葉県八街市で起きた小学生が死傷したトラック事故で、千葉地検は運転手を危険運転致死傷罪で起訴した。飲酒運転の厳罰化の効果は一定程度はあったが、犠牲者は未だに絶えない。「緑ナンバー」の事業者には飲酒検査が義務付けられ、道路交通法には「安全運転管理者」の設置規定がある。呼気からアルコールが検出されるとエンジンがかからない装置も開発されている。総合的な交通政策で、子どもを守ることが大人の責務だ。

『小山田氏辞任 五輪理念ますます遠く』

東京五輪パラリンピックの楽曲担当者だった小山田氏が辞任した。虐待や暴行ともとれるいじめ行為を、過去に雑誌のインタビューなどで語っていた。人間の尊厳、差別の否定を掲げる五輪の式典に、こうした人物が関わることがふさわしいとは思えない。問題とせず、続投の意向を持ち続けた組織委の対応も理解不能だ。事態を統御できず、説明責任を果たせない組織委のもと、混迷と不信と不安が残る中、「平和の祭典」が幕を開けた。

 

産経新聞

『文氏の訪日断念 首脳会談のときではない』

韓国の文在寅大統領が訪日を断念した。関係悪化は、文政権が慰安婦問題や徴用工訴訟について、国家間の約束を踏みにじる反日を続けてきたからだ。五輪選手村での福島県産食材の使用を懸念し、自国食材の給食センターを設けた事例は、科学的根拠に欠け、悪意とも受け取れる。豊臣秀吉朝鮮出兵に関する反日の横断幕は、五輪憲章違反としてIOCが撤去を勧告した。会談は、行動を伴う形で韓国が反日を改めた後で良い。

照ノ富士横綱へ 角界はもっと危機感持て』

大関照ノ富士が、第73代横綱に昇進する。序二段まで番付を下げたが、驚異的な復活を遂げた。名古屋場所では、優勝を逃したものの14勝1敗の成績は立派だ。一方、進退を欠けた白鵬は、全勝優勝こそ手にしたが、感情むき出しの振る舞いや、勝つことだけに固執した取り口は、見るに堪えない。神事「相撲」への冒涜だ。全勝優勝は上位陣の層が薄いことを物語る。日本相撲協会は危機感を持って、対策に取り組むべきだ。

 

東京新聞

『日韓会談見送り 意思疎通を途切らすな』

韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領が東京五輪に合わせた訪日と、菅義偉首相との会談を見送った。両国の意思疎通が滞っているのは、歴史問題を巡り、日本側が韓国側に対し、受け入れ可能な解決策を提示するよう求め、首脳会談の開催を見送ってきたからだ。両国間では元徴用工や元慰安婦、対韓輸出などの懸案事項が残る。政府間で生まれた対話の機運を広げ、関係改善の道を探ってほしい。

『開会直前の五輪 迷走生んだ無責任体質』

東京五輪開会式で楽曲制作担当の小山田圭吾氏が辞任した。学生時代、長期に渡っていじめを行っていたことが理由だ。音楽紙に自慢気に話し、その無反省ぶりに、ネットではたびたび批判されていた。人選した大会組織委員会の脇の甘さと無責任ぶりが露呈した。問題発覚後、組織委は彼を擁護し、五輪担当相は説明責任を果たさなかった。感染対策を厳格に講じるためにも、大会の運営体制を早急に立て直す必要がある。

 

毎日新聞

『文大統領の来日見送り 対話の努力続けるべきだ』

オリンピック開幕に合わせた韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領の日本訪問が見送られた。五輪での会談は儀礼的なものだが、両国間の現状を考えれば、好機を逸したのは間違いない。元慰安婦・徴用工問題で韓国側が歩み寄らなければ、日本も動かないとの姿勢を崩していない。外交は利害の対立があれど、交渉で落とし所を探るのが本筋だ。東アジアの地政学的安定のために、両国の協力は欠かせない。両国に対話の努力を求める。

『五輪楽曲担当者が辞任 組織委の人権意識を疑う』

東京オリンピック開会式の楽曲制作を担当していた小山田圭吾氏が辞任した。過去のインタビューで、障害がある同級生をいじめていたことを語っていた。組織委は、森喜朗氏の女性蔑視発言など、人権への配慮に欠けていると言わざるをえない。東京オリンピックは「多様性と調和」を理念に掲げている。組織委の人権への配慮に欠けた体質を改めなければ、五輪と国民の距離は開くばかりだ。

 

【読売新聞】

『五輪外交 ともに困難を乗り越えたい』

東京五輪の開会式に合わせ、各国用心が来日する。韓国の文在寅大統領は、土壇場になって来日を見送った。日韓関係の改善に向けた対話の機会が失われたのは残念だ。韓国側は、選手村で福島県産品を食べないよう指導し、また、反日的な横断幕を掲げたという。政治的な主張を五輪に持ち込まないよう配慮を求めたい。新型コロナウイルスの世界的な流行阻止に向け、管首相には会談で、国際協調の機運を高めるよう努めてほしい。

『コロナ再拡大 「第5波」への具体策打ち出せ』

新型コロナウイルス流行から1年半、緊急事態宣言を出し、国民の行動を制限する手法は限界にきている。ワクチン接種も供給が滞る。政府として、いつまでに何をやるのか、具体的な計画を策定することが大切だ。ワクチン一辺倒ではなく、検査体制の拡充や科学的な根拠に基づいた経済活動の推進、新手法による感染状況の把握など、政府には新技術も取り入れながら、感染対策に万全を期してほしい。

 

令和3年7月20日の社説

毎日新聞

『電動キックスケーター 安全最優先のルール必要』

電動キックスケーターが注目されている。交通ルールのあり方を検討していた警察庁有識者会議は、中間報告で時速15キロ以下ならば自転車に近い扱いと結論づけた。近年、自転車に関連する事故が増加傾向にある。今後新たな乗り物が増えていくだろう。これまでの自動車優遇の道路政策を改めるべきだ。

『五輪「バブル方式」に穴 主催者の危機意識足りぬ』

選手らを外部と遮断した環境に起き、感染から守る「バブル方式」の欠陥が顕在化している。関係者の感染発覚や濃厚接触者の出現が相次ぐ。そんな中、IOCのバッハ会長などは楽観的な見方を崩さず、現状を甘く見ている。組織委がバッハ氏を招き開いた歓迎会場の外では、抗議デモが起こった。国民の不安に配慮した大会運営が求められる。

 

朝日新聞

『コロナ第5波 命を救う準備を急げ』

変異株の感染拡大により、第5波が到来している。ワクチン供給や酒類提供停止などで、政府のコロナ対策への国民の不信感は募った。菅首相は希望的観測を発言するばかり。次の感染拡大に備え、病床確保など医療体制を立て直すため、支援策等を国会で審議すべきだった。が、国会は早々に閉会。五輪開催国の責務として、十分な医療体制を整えるべきだ。

『海外の日本人 帰国支援の体制強化を』

変異株が流行するインドネシアに在住する日本人の帰国が課題となっている。受け入れの障壁となっているのが、日本政府が行う入国制限だ。検疫や入国後の待機施設が不足している。民間企業が特別便で社員を帰国させたことを契機に、政府への対応の声が上がった。首都圏以外の空港での受け入れなどの方策も検討すべきだ。官邸が主導し、課題解決に当たるよう求める。


【読売新聞】

『英のコロナ規制 全面解除に懸念は拭えない』

英政府がイングランド全域で、コロナ感染対策のほぼすべての規制を撤廃した。撤廃に踏み切ったのは、国民の半数が2回目のワクチン接種を終えたためだ。ジョンソン首相が国民の生活の正常化を進める最適な時期と撤廃を判断した。しかし、このところの英国の新規感染者数は急増中だ。懸念は残る。死者数を押さえることと、日常生活の回復との両立は各国の共通課題だ。

 『日銀の脱炭素策 効果的な側面支援となるか』

日本銀行が、温暖化対策に取り組む企業に、融資や投資をしやすくする資金供給策骨子案をまとめた。民間金融機関への貸付金利を0%にする。脱酸素社会への支援策と見られる。ただ、中央銀行の本来の役割は物価と金融システムの安定だ。中立性を確保し、経済を歪めることがあってはならない。投資判断する金融機関側には十分な情報開示を求めるなどの措置が必要だ。

 

産経新聞

『五輪観客問題 選手の声に耳を傾けたい』

原則無観客開催が決まった東京五輪。選手らからは観客の前でプレーしたいとの声が上がっている。バスケットボールの強化試合は、緊急事態宣言下の沖縄において有観客で行われた。スーパーコンピュータ「富岳」のシミュレーション結果は、1万の観客でも感染対策をとれば、感染リスクはゼロに近いというものだった。開催自治体の小中高生をスタンドに招待することを検討してほしい。子供たちの真剣なまなざしは、国内外のすべての選手たちに力を与えるはずだ。

『ワクチン不足 接種スピードを落とすな』

新型コロナワクチン供給が滞り、接種を一旦とりやめる自治体が相次いでいる。菅首相は、月内にも5割を超える国民が、1回目の接種を終えるとの見方を示した。ただワクチンが届かず、混乱する事例は数知れない。自治体の熱意に国がブレーキをかけるのはおかしい。迅速なワクチン接種を行いため、供給量を確保し続けることが国の責務だ。

 

東京新聞

『米アフガン撤退 後始末が残されている』

来月末の米軍のアフガニスタン完全撤退を前に、反政府勢力タリバンが支配地域を急速に広げている。アフガニにスタン政府軍が隣国を越境した事件も起きた。米国は約二十年間、国際テロ組織アルカイダを保護しているという見方で、タリバン政権を軍事的に崩壊させた。撤退を機にテロの温床になるとの見方は早計だ。むしろ懸念は撤退に伴う混乱の方だ。米国には「民主化」を理由に介入してきた後始末をつける責務が残っている。

 『コロナと税収増 格差の是正へ配分を』

国の2020年度の税収が過去最高を記録した。コロナ禍で経済成長がマイナスにも関わらずだ。その背景には、深刻な所得格差の広がりがある。巣ごもり消費から好決算が相次ぎ、法人税の増収につながった。また、富裕層の所得増加によって所得税が増えた。一方、低所得者に負担が大きい消費税の税収も増えた。社会の分断を防ぐ観点からも、所得再分配政策は必要である。