shasetu’s diary〜新聞5紙の社説を要約〜

新聞5紙の社説を要約し、読み比べできるようにしました

令和3年7月30日の社説

朝日新聞

『温室ガス削減 具体策示して協力促せ』

政府が温室効果ガス削減に取り組む計画案をまとめた。2030年度に13年度比46%削減を達成するため、産業部門は現行の7%から37%に、家庭部門は39%から66%へと削減率を引き上げた。家庭や企業が取り組む具体的な施策と目標を詰め、行動しやすい情報を提供しなければならない。二酸化炭素排出量に価格をつける「カーボンプライシング」の導入も検討してほしい。そして、再生可能エネルギーの最大限の活用を進められる施策も求められる。将来のために何を優先すべきか、考えねばならない。

商業捕鯨3年 官依存からの脱却を』

商業捕鯨が今年で3年を迎えたが、鯨肉の卸売市場規模は年25億円程度なのに対し、昨年度の水産庁補助金は51億円と補助金漬けで、商業とは名ばかりだ。捕鯨業の中核を担う共同船舶が後継船の建造計画を決め、その費用は融資やクラウドファンディングでまかなう。「官製捕鯨」からの脱却として評価できる。ただ、後継船の仕様に必要とは思われない南極海操業の機能を持たせるという。採算も不透明だ。商業捕鯨継続には補助金からの脱却と、国際社会の理解を得るための努力が必要である。

産経新聞

北方領土上陸 対露制裁の発動が必要だ』

ロシアのミシュスチン首相が26日、北方領土択捉島に入り、実効支配を誇示した。日本以外からも投資を呼び込もうと、関税などを減免する意向も示した。日本固有の領土である四島の不法占拠を固定化しようとする動きで、政府は、ロシアに制裁を発動すべきだ。プーチン政権は、昨年、憲法改正で領土の割譲や割譲の呼びかけを禁じた。日本はロシアの揺さぶりに動じることなく、毅然とした態度を貫くことだ。北方領土での甘い対応は、中韓両国が尖閣諸島竹島を巡り増長しかねない点も銘記すべきだ。

『コロナと五輪 選手の活躍を家で観よう』

新型コロナウイルスの感染拡大を東京五輪に結び付けるのは間違いだ。新たな感染者数は、2週間前の状況を反映するものである。日々の熱戦に、世の中は興奮している。開会式の平均世帯視聴率は令和のテレビ番組最高の56.4%(関東地区)を記録した。五輪開催に否定的だった各紙やテレビ局も連日、紙面や中継で大展開している。彼らの手のひらを返させたのは国内外の選手の、圧倒的な競技力そのものだ。選手の活躍を家で観よう。五輪の熱戦に触れることが、感染抑止に寄与するなら、好循環と言える。

東京新聞

『真夏の五輪 拝金主義を見直さねば』

猛暑から、東京五輪のテニス競技の開始時刻が変更になった。真夏の五輪開催は、巨額の放映権料を負担する米メディアの意向とされる。これでは「アスリート・ファースト」ではなく「テレビ・ファースト」だ。東京都は招致活動の際、この時期は「晴れる日が多く温暖」「アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な機構」PRしていた。無責任な虚言と言わざるをえない。国際オリンピック委員会は拝金主義を見直し、テレビ局への過度な依存を改めるべきだ。

『遅れる飲食支援 地域の灯守り抜きたい』

コロナ禍において、国や自治体の支援が滞り、飲食店の苦境が鮮明となっている。資金は準備できているが、実際の支援が届かない。予算がスムーズに支援に回らないのは、国と実務を行う自治体との連携不足だ。国と自治体は早急に問題点を洗い出し、即効性の高い支援の枠組みを策定すべきである。飲食店は商文化に潤いをもたらす「地域の灯」だ。この灯を消さないためにも、地域の人々の協力も欠かせない。テークアウトの利用など、小さな積み重ねが、コロナ禍から地域を守る道へとつながるはずだ。

毎日新聞

世界遺産に縄文遺跡群 自然との共生知る機会に』

国連教育科学文化機関(ユネスコ)が「北海道・北東北の縄文遺跡群」の世界文化遺産への登録を決めた。日本最大級の縄文集落跡である青森県三内丸山遺跡など4道県の17遺跡で構成される。狩猟や漁労、採集をしながら定住生活を送り、自然環境に適応した持続性のある社会を形成していた。近年、「縄文ブーム」といわれるが、遺跡そのものには目が向けられなかった。縄文遺跡は全国各地に9万件あるという。身近にある遺跡に興味を寄せ、コミュニティーの歴史を考える機会になるはずだ。それが文化財保護にもつながる。

『米中の外交高官協議 対話積み重ね緊張緩和を』

国務省のシャーマン副長官が、中国の王毅国務委員兼外相や謝鋒外務次官と個別に会談した。今回は双方が緊張緩和の必要性を認識したのだろう。ただ、双方が関係悪化の原因を相手側に求め、従来の主張を繰り返したことは、溝の深さを示している。シャーマン氏は「国際秩序を損なう中国の行動」を批判。中国側は特に台湾問題には米国の動きをけん制した。国際協調を重視するのが大国のあるべき姿だ。米中は対話を積み重ね、対立を制御する努力を続けなければならない。

読売新聞

『全国高校総体 困難乗り越えた成果の発揮を』

全国高校総合体育大会(インターハイ)が始まった。2年ぶりの開催となる。新型コロナウイルス感染症の影響で、学校生活が制約される中、日頃の努力の成果を十分に発揮してほしい。授業や体育祭などの行事、部活動が制限される中、あきらめずに練習し出場を果たした選手たちには誇りを持ってほしい。課題は感染を防ぎ、安全に大会を行うことだ。31日には、文化部のインターハイ「全国高校総合文化祭」も2年ぶりに開催される。同じテーマに取り組んできた全国の仲間と交流できる良い機会になるだろう。

『国家安保局 政府一体で危機に対処せよ』

首相を議長とする国家安全保障会議の事務方トップである国家安全保障局長に、秋葉剛男前外務次官が就任した。米中双方の政策を熟知しているとされる。中国は経済・軍事両面で国際秩序を混乱させ、北朝鮮やロシアは軍事力を増強させている。国家安保会議の役割は一段と増すばかりだ。最優先の課題は、経済安全保障への対応だ。主要国は、重要な技術やデータの囲い込みを進めている。サイバー攻撃への対処も必要だろう。政府一体で戦略を練り、対処する態勢を強化することが肝要である。