shasetu’s diary〜新聞5紙の社説を要約〜

新聞5紙の社説を要約し、読み比べできるようにしました

令和3年7月29日の社説

朝日新聞

『日ロ経済活動 甘い交渉が招いた帰結』

ロシアのミシュスチン首相が北方四島択捉島を訪れ、四島への投資を呼び込むため、外国企業など各種税金を大幅減免する案を示した。これまでロシアの法律の非適用や自国のみの協力体制を求めてきたが、それが退けられた形だ。前安倍政権で、四島での共同経済活動について合意しているが、実現のメドはたたない。成果を誇っていた合意は、根拠に欠ける楽観的な認識に過ぎなかったのではないか。菅政権は、前政権の失敗を認め、対ロ外交を立て直す責務がある。

『感染者の急増 社会で危機感の共有を』

新型コロナの感染者が全国で急拡大している。重症者の中心は働き盛りの世代に移り、デルタ株への置き換わりも進む。専門家や医療現場からはこれまで以上の危機感が示されている。しかし、国や自治体、国民の間でその危機感が共有されてるだろうか。政府・都は外出自粛を呼びかけながら、五輪という巨大イベントを強行。自分たちの振る舞いから、市民に言葉が届かなくなった現実を反省し、状況改善に当たる。そして社会全体で認識の共有を図ることが大切だ。

産経新聞

『コロナ感染急拡大 基本を見直し抑止を図れ』

新型コロナウイルス感染者数が急増している。今年初めの「第3波」のピークを越える危機的な状況だ。これまでのコロナ対策を基本から見直す必要がある。首都圏1都3県のコロナ対策を一本化し、軽症や無症状の感染者への対応についても自宅療養から宿泊療養を拡充する。お盆を控え、全道府県を対象に蔓延防止等重点措置を適用することを提言する。打つ手がないわけではない。

『「黒い雨」上告断念 救済の枠組み作り急げ』

国が「黒い雨」訴訟の上告を断念した。国は早急に判決の趣旨に沿った救済の枠組みを構築すべきだ。これまで国は、援護区域にいてがんなど特定の疾病になった場合のみ、特例的に被爆者と認定してきた。広島高裁の判決は、区域外で雨を浴びた全員に被爆者健康手帳の交付を認めた。区域外で雨を浴びた人は、今も約1万3千人いるとされる。国は区域拡大の再検証を進めるが、その作業に時間がかかるあまり、高齢となった人々の救済が間に合わなくなることだけは絶対に避けたい。

東京新聞

ユネスコ決議 「遺憾」解消する説明を』

長崎県端島炭鉱などの世界文化遺産明治日本の産業革命遺産」の説明を巡り、国連機関が不十分として「強い遺憾」を示した。徴用された朝鮮人労働者について、政府の「産業遺産情報センター」での説明に不備があるとされる。日本側は登録に当たり、一部施設で過酷な条件下での強制労働があったと理解できる措置を講じるとしていた。負の側面も含めて発信することで、むしろ遺産としての価値は高まるはずだ。情報センターの役割は産業遺産全体について次世代へ語り継ぐこと。歴史や法律論争の場にしてはならない。

『コロナ急拡大 対策を練り直さねば』

首都圏で新型コロナウイルスの感染が急拡大している。二十八日に開かれた厚生労働省の専門部会は「これまでに経験したことのない感染拡大」と指摘した。四度目の緊急事態宣言発令後、人出は減ったが、以前と比べ減り方は鈍い。首相の説明は危機感を欠き、五輪優先の姿勢が透けて見え、あまりに不誠実だ。ワクチン2回接種率は国民全体の3割にとどまる。重症化しやすいデルタ株に置き換わりが進む中、医療逼迫が心配だ。政府はより住民に近い自治体と危機感を共有すべきだ。

毎日新聞

『元立憲の本多議員辞職 不信広げた執行部の迷走』

性交同意年齢についての問題発言で、立憲民主党を離党した本多平直衆院議員が議員辞職した。現在の刑法では、性交すると罰せられる相手の年齢は13歳未満だが、党の非公開会合で16歳未満に引き上げるよう提案した外部講師に対し、「50代の私と14歳の子とが恋愛したうえでの同意があった場合に、罰せられるのはおかしい」と発言したという。当初、党は口頭での厳重注意で済ませていた。執行部の対応は後手に回り、統治不全を露呈した。社会に受け入れられない議員の言動には、厳正に対処するのが政党の責任だ。

『五輪さなかの第5波 首相の楽観姿勢を危ぶむ』

緊急事態宣言下の東京都で新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない。深刻なのは、宣言発令から2週間以上経つが、減少に転じていないことだ。医療現場は病床逼迫への危機感を強める。菅首相は、五輪について、「人流(人出)は減少しており、心配ない」と中止の可能性を排除した。首相が根拠の薄い楽観姿勢に留まり続けるようでは、国民の協力は得られない。医療崩壊を避けるため、気を緩めず感染対策をするよう、明確なメッセージを打ち出すべきだ。

読売新聞

カルテル容疑 電力自由化の趣旨に反する』

公正取引委員会が、九州電力とその販売子会社、関西電力中国電力に対し、独占禁止法違反容疑で立入検査した。電力小売りの自由化前に供給していた地区を超えて、顧客獲得しないよう取り決めていた疑いだ。電力自由化は、新規参入を促し、料金を押さえるのが狙いだ。競争激化で、大手電力会社の発電所や送電網への必要な投資が進まない現状だが、コスト削減などで収益力を上げて対処するのが本筋だ。健全な競争で自由化の恩恵を利用者に届ける努力を尽くすべきだ。

『コロナ急拡大 局面を見極め対策切り替えよ』

東京都で新型コロナウイルスの感染者数が過去最多を記録した。対策の一層の強化が必要だ。感染者の中心は、30歳代以下で、全体の7割を占める。緊張感が薄れ、デルタ株が広がるなか、拡大が危惧される。40〜50代の重症患者が増え、病床逼迫が懸念される。一方、ワクチン接種が進む65歳以上では感染者は全体の3%だ。何より、ワクチン接種を急ぐ必要がある。感染が拡大するごとに、宣言の延長や自粛要請の繰り返しでは解決にならない。メリハリの利いた対策が重要だ。