shasetu’s diary〜新聞5紙の社説を要約〜

新聞5紙の社説を要約し、読み比べできるようにしました

令和3年7月28日の社説

朝日新聞

世界自然遺産 保護の責務 国は自覚を』

奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表(いりおもて)島」が世界自然遺産に登録されることとなった。観光政策との調整にこれまで以上に心を配る必要がある。あわせて、絶滅危惧種ヤンバルクイナなどが生息する沖縄島北部には、米軍基地を巡る問題がある。米軍の北部訓練場のうち16年に4千ヘクタールが返還され、そのうち、7割が推薦地域に含められた。その跡地からは空砲やドラム缶などが見つかっている。自然遺産の保護は国際社会への日本の責務だ。

『「黒い雨」救済 根本から改め対応急げ』

地理的な線引きや健康被害の有無に関わらず、「黒い雨」に遭った人は被爆者であるとの判決を広島高裁が下した。国は上告を断念し、判決が確定する。首相は、原告へ速やかに被爆者健康手帳を交付し、原告と同様の事情にある人を被爆者と認定・救済できるよう検討すると話した。気がかりなのは、首相が内部被爆は容認できないとした点と、厚労省有識者検討会が「科学的な合理性」にこだわり議論が行き詰まっている点だ。被爆者援護法が成立して四半世紀余り、今度こそ被爆者の思いに応えなければならない。

産経新聞

『卓球の金メダル お家芸復活を喜びたい』

卓球混合ダブルスで金メダルを獲得した水谷隼伊藤美誠は、日の丸が揚がり、君が代が流れると、表彰台でともに涙した。卓球は、かつて日本のお家芸だった。水谷は日の丸がてっぺんに揚がり、君が代を聞いているときはアスリートとして誇りに思った最高の瞬間だったと語った。お家芸の柔道では大野将平が連覇を果たした。初戦から「礼」の美しさと、優勝を決めても畳を下りるまで歯をみせず、浮かれるそぶりはなかった。国籍や勝敗を超え、彼らの奮起に拍手と賛辞を送りたい。

皇位有識者会議 男系男子復帰の具体化を』

皇位の継承策などを検討する政府の有識者会議が、旧宮家の男系男子を現皇族と養子縁組し皇籍に復帰させる案を出した。これまでの男系(父系)継承を尊重しながら皇統を守る現実的な策で、評価できる。会議では、女性皇族が結婚後も皇籍を保持する案も出た。会議では「女系天皇」論は少数で、男系男子の復帰の意見が多数だった。結婚後も女性皇族が皇籍に残る案は、女系継承へつながる恐れがあるなど、問題が多い。政府は、男系男子の皇籍復帰の具体化に力を注ぐべきだ。

東京新聞

『ワクチン証明書 接種しない人に配慮を』

新型コロナウイルスのワクチン接種を受けた人に発行する証明書の申請が始まった。国によっては、証明書があれば入国時の検査や隔離措置を免除するという。発行によって活動しやすくなる利点はあるものの、無接種者への差別につながらないか心配だ。国内での利用は、陰性証明と併用するなど、無接種者への配慮が必要である。接種後も基本的な感染対策は必要なのだから、政府はいま一度、感染対策の必要性を訴えるべきだ。

『レジ袋有料1年 使い捨て文化を捨てる』

プラ製レジ袋の有料化が義務付けられ1年が過ぎた。義務化は、海の生き物に害を与えるだけでなく、人体への影響も心配されるからだ。ただ、プラごみに占めるレジ袋の割合は2%に過ぎない。約半数を占める容器包装類の削減がより効果的だ。そのキーワードが「リユース(再利用)」と「リフィル(詰め替え)」である。スーパーや飲食店ではリフィルの新たな取り組みが始まった。「便利でおしゃれで安価」のライフスタイルが定着すれば、おのずとプラごみは減る。大事なのは「次の一手」だ。

毎日新聞

原発維持の基本計画 現実直視し発想の転換を』

経済産業省が「エネルギー基本計画」の改定案をまとめた。その中で、注目したいのが2030年度の各電源の比率見通しだ。再生可能エネルギーは3年前の22~24%から36~38%に、原発は20~22%と踏襲した。原発については非現実的と言える。これでは、30年度に老朽した原発も含め27基のを高稼働率で動かす必要がある。低コストとされた原発は、安全対策コストが嵩むとされ、再生エネよりも高い。コスト優位性が崩れた今こそ、思い切って発想を転換すべきだ。

『露首相の択捉島訪問 揺さぶりでは交渉動かぬ』

ロシアのミシュスチン首相が、北方領土択捉島を訪問した。日本側は政府要人の訪問を差し控えるよう申し入れてきたが、無視された格好だ。ミシュスチン首相は訪問の際、対日関係に関わる新たな提案を公表した。北方領土を「関税免除区域」とするというもの。ロシアの実効支配の強化につながる恐れがある。背景には日露共同経済活動の行き詰まりと、プーチン大統領の国内での支持率低下がある。揺さぶりでは交渉は進まないことを、ロシアは自覚すべきだ。

読売新聞

『「黒い雨」訴訟 上告見送りを救済の第一歩に』

広島の原爆投下後に降った「黒い雨」を巡る訴訟で、政府は最高裁への上告を断念した。国はこれまで「援護対象区域」で黒い雨に遭い、がんと診断された場合に被爆者と認め、被爆者健康手帳を交付してきた。判決は、現区域の6倍の広さで黒い雨が降ったと認定した。国が進めている援護対象区域の再検証において、厳密な科学的根拠にこだわりすぎれば、救済はさらに遅れるだろう。原爆被害者は高齢となっており、早急に救済に当たらなくてはならない。

択捉島特区構想 露支配の既成事実化は許せぬ』

ロシアのミシュスチン首相が、日本固有の領土である択捉島を訪れた行為は、ロシアの支配を既成事実化しようとする意図が明白で、重大な主権侵害だ。訪問は、日露で検討している北方4島での共同経済活動の停滞と、9月の下院選を前に、極東の経済底上げをアピールするためだろう。ミシュスチン首相は、北方領土への投資に対する税負担を減免し、投資を促進すると発表した。菅首相は日本の領土を守るという確固とした戦略を示し、日本の立場を明確に伝える必要がある。