shasetu’s diary〜新聞5紙の社説を要約〜

新聞5紙の社説を要約し、読み比べできるようにしました

令和3年7月26日の社説

朝日新聞

『政治家の世襲 政党は制限の検討を』 ベテラン議員の引退表明が相次ぎ、親族に地盤を引き継ぐ世襲が目立つ。既得権益の温存につながり、政治の活力を損なう世襲の制限に、各党は取り組む必要がある。世襲であることと、政治家の資質は別問題だが、「地盤、看板(知名度)、カバン(資金)」を最初から持つ2世、3世が優遇されれば、多様な人材が政治に参加する足かせとなる。かつて、各政党が世襲禁止を打ち出したことがある。各政党はかつての議論を思い起こし、世襲制限を検討してほしい。

財政再建目標 虚構の議論を改めよ』

政府の中長期の財政試算によると、財政健全化の達成の可能性が、計算上は残ったように見える。しかし、現実的とは思えない。試算では25年まで年平均3.9%超の成長を想定している。そして、補正予算は加味していない。厳しい現実を覆い隠し、改革を怠る口実を与えるだけの試算と言えよう。メリハリある歳出と、増税検討も課題だろう。格差是正のために金融所得や高収益企業への課税強化をまず考えるべきだ。こうした議論に資する財政試算こそ、政府に求める。

産経新聞

『ワクチン証明書 渡航に限らず活用を図れ』

新型コロナウイルスワクチンの接種を証明する「ワクチンパスポート」の申請受付が開始される。一部の国・地域への渡航の際、提示すれば入国時の隔離期間が免除・緩和される。なぜ使途を渡航目的に限定するのか。多様な利用法を考えるべきだ。接種済み証明も同様だ。接種の強要や差別が生じる懸念が、国内運用に二の足を踏ませている主な理由だろう。有事対応でいたずらに公平性にこだわることこそ適切ではない。安心して活動できる環境を作ることが大切だ。

『日本勢の躍進 五輪開催がくれた感動だ』

日本選手の金メダル獲得が、東京五輪大会を盛り上げている。日本勢の活躍が必ずしも大会成功を意味しないが、明るい話題は社会の活力になる。われわれがテレビを通じ、喜びや感動を共有できたのは、大会開催という決断があったからだ。大会組織委員会にはコロナ対策を含む安全な運営に努めてほしい。スポーツを通じた人間の強さ、可能性を発信し続けたい。

東京新聞

『相模原事件5年 どう防げたか模索続く』

相模原市知的障害者施設「津久井やまゆり園」で、入所者の命が奪われた事件から五年になる。事件の五ヵ月前、衆院議長宛に「犯行声明」を渡し、それを受けて相模原市は、精神障害が原因で自傷他傷の可能性がある患者を強制入院させる「措置入院」を命じた。十二日後に措置入院は解除され、七月二十六日に凶行に至る。厚生労働省は事件後、「退院後の措置」に不備があったと総括した。事件後、退院した後でも行政、医療、福祉関係者、警察が総合的に支援することを義務付ける精神保健福祉法の改正案が参院で可決された。だが、結局廃案となる。警察の関与を除いた指針を厚労省は示したが、現場は運用に苦慮している。人権に配慮しつつ、継続支援や実態把握ができる仕組みを熟慮してほしい。全国的に、職員による入所者への虐待は右肩上がりに増加している。事件はどうすれば防げたのか。「共生社会」の実現を見据え、社会全体で重い課題に向き合い続けたい。

毎日新聞

『米国で広がる投票制限 民主主義の精神に反する』

民主主義の再生を訴えるバイデン大領領が就任し半年。現実は、民主主義への逆風が強まっている。期日前投票の期間短縮や、郵便投票の際の身分証明書の提示義務化など、投票権を制限する動きが各地で広がる。与党・民主党を支持する黒人が多く利用する方法への制限である。民主主義の根幹である国民主権の保証のため、あらゆる有権者に公平で、投票しやすい環境を整えるのが政治家の責務だ。国際社会に民主主義の優位性を訴えても、これでは響くはずもない。

『やまゆり園事件5年 隣人として暮らす社会に』

相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で多数の利用者が殺傷された事件から5年となる。裁判で被告は「意思疎通の取れない人は社会の迷惑」などと差別発言を繰り返した。施設建設が住民の反対で中止・変更を迫られるケースが相次ぐなど、社会の目は変わらない。障害者への虐待は2019年度に2202件。どんな環境で生活するか、障害者の意思の尊重が、国際的な流れだ。国や自治体の施策拡充が欠かせない。誰もが隣人として暮らせる社会にしていく必要がある。

読売新聞

『ビジネスと人権 供給網の点検を国が支援せよ』

中国新疆ウイグル自治区に供給網を持つ企業などの中に、 米国の輸出入の法律に違反する企業が存在する可能性を示す警告文を出した。少数民族へのジェノサイドや強制労働など、人権侵害を犯しているとの判断があったという。欧州でも、企業に人権侵害の調査と報告を義務付ける法整備の動きがある。世界を相手にする企業は、供給網の点検が必要だ。現在、中国側の反発で自治区の現地調査は困難という。政府は人権侵害反対の姿勢を示し、企業を支援すべきだ。

『五輪日本好発進 険しい道のりを示す選手の涙』

東京五輪で、柔道と競泳を中心にメダル獲得が相次いでいる。柔道はロンドン五輪では金メダルゼロ、リオ五輪では2個にとどまった。新型コロナウイルス感染症の影響で、五輪は1年延期された。その中で、選手たちは心身の管理に苦しんできた。選手の涙に、これまでの苦難と周囲の支援へ対する感謝の現れだろう。