shasetu’s diary〜新聞5紙の社説を要約〜

新聞5紙の社説を要約し、読み比べできるようにしました

令和3年7月25日の社説

朝日新聞

『アフガン混迷 米中ロの強調が必要だ』

アフガニスタンが、米軍撤退により、再び国際テロの温床となれば世界にとって悪夢だ。米国と中ロの対立は続いているが、危機感は共有しているはずである。米国の情報によると、反政府勢力のタリバーンの支配地域は4月の約2割から、5割以上に拡大している。中ロと中央アジア諸国で構成する上海協力機構は外相会議を開き、声明で「政治対話と和平プロセス」の促進を呼びかけた。両国とも、地域情勢の安定を真剣に望んでいる。アフガニスタンで戦争を始めた米国には、停戦を実現させ、秩序回復への道筋をつける責務がある。先日、アフガニスタン政府とタリバーンが和平会議を開いたが、物別れに終わった。周辺国を巻き込み、多角的な外交努力を強めるべきだ。バイデン政府は中国を最も重大な競争相手と呼び、ロシアとの関係も冷戦後、最悪とされる。だが、米国務省アフガニスタンを「共通の関心のもとで協力できる分野の一つ」と呼びかけている。その実行のときだ。

産経新聞

『五輪競技本格化 偉大な敗者に拍手を送る』

東京五輪の各種目の競技がはじまった。ショックだったのは、体操の内村航平が種目別の鉄棒で落下したことだ。内村は予選敗退が決まり、大会を去る。観戦の基本は「勝者には祝福を、敗者にはいたわりを」だ。内村のような偉大な敗者には盛大な拍手を送りたい。度重なる故障で満身創痍の32歳に、1年延期はどれだけ負担だったか。選手の事情をおかまいなしに、延期を主張した識者、政治家らに、どれだけ無神経な発言だったかを知ってほしい。

東京新聞

『週のはじめに考える 危機に乗るな、風に乗れ』

商いの世界では、危機に乗じるのは必ずしも不道徳に非ず、逆に才覚のうちだとなるかもしれませんが、コロナ禍においてこれを利用しようとする輩が少なくありません。マスクが払底する中、ネット競売でマスクを出品しひんしゅくを買った県議がいました。コロナ対策給付金詐欺には、経産官僚までが手を染めていました。ワクチン詐欺なども。政治にも似通った動きがないとは言えません。一つは改憲案。緊急事態に際し、内閣が私権を制限できる「緊急事態条項」を加えようとするものです。地球温暖化という危機にも同じようなことがいえます。政府が原発の六十年超の運転を認める法改正を検討しているというニュースが伝えられました。「新増設できないのなら超老朽原発を動かす」という、少し脅しめいてさえいます。再生可能エネルギーは猛烈な追い風を受けています。危機に乗じるより、風に乗れ。「脱炭素・脱原発」の未来へと向かって吹く強烈な追い風に-。

毎日新聞

東京五輪とコロナ対策 感染拡大防止を最優先に』

東京オリンピックの競技が続く中、新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない。五輪は200を超える国と地域から、約5万が集まる巨大イベントだ。政府や大会組織委員会は、感染拡大を防ぐことを最優先すべきだ。コロナ禍に苦しむ国民から「何のための五輪なのか」という疑問が噴き出したが、組織委や政府からの明確なメッセージは出されないままだ。外部と遮断し感染を防ぐ「バブル方式」は機能不全を起こしている。国内では「第5波」が広がっている。感染力が強いとされるデルタ株の増加も心配だ。医療体制の逼迫があれば、政府や組織委は競技の打ち切りを含め適切に対応しなければならない。その判断基準を示す必要がある。専門家からは自宅で家族らとテレビなどで観戦するよう呼びかける。大きな制約の下での大会だが、それでも最善を尽くそうとする選手たちには、エールを送りたい。

読売新聞

『EV充電設備 ガソリン車並みに使いやすく』

電気自動車(EV)の普及のために、充電設備の整備を急ぐことが不可欠だ。政府は成長戦略で、EV用急速充電設備を現在の4倍近くに当たる3万基に増やす方針を掲げた。菅内閣は、35年までに国内販売の全新車をハイブリット車(HV)やEVなどの「電動車」とする目標を立てている。長距離移動の車が多い高速道路のSAなど、ニーズが多い場所にまずは設置することだ。もっと短時間に充電できる技術開発や、災害時の緊急電源といった用途の多様化も望まれる。

『ワクチン証明書 政府は活用策を前向きに探れ』

政府は26日から、新型コロナウイルスワクチンの接種証明書の申請を受け付ける。当面、海外への渡航予定者を対象とする。経済界では、証明書を制限緩和につなげ、接種終了者の消費を喚起したい考えだ。接種できない人などには、陰性証明で代替するなど、不利益が生じないようにしてほしい。また、接種証明が不当な差別につながる行為は許されない。政府は課題を整理し活用の指針をまとめるべきだ。若者に接種を呼びかける取り組みを進めてほしい。