shasetu’s diary〜新聞5紙の社説を要約〜

新聞5紙の社説を要約し、読み比べできるようにしました

令和3年7月24日の社説

朝日新聞

『子宮移植 課題解決 透明性をもって』

生体からの子宮移植について、日本医学会の検討委員会が臨床研究の実施を認める報告書をまとめた。報告書では、子宮の提供にドナーの自由意思による同意が必須条件であるとした。親娘間では、断る意思を示せるか。提供を受ける側の負担も小さくない。免疫抑制剤が、子どもにどう影響するかも定かでない。国の指針には、生体移植はやむを得ない場合に例外的に実施されるとある。市民との議論の場を設け、探りながら合意形成に務める責務が、関係者にはある。

『日銀と機構 果たすべき役割 熟考を』

日本銀行が、気候変動対応に資する取り組みの投融資に、金利ゼロ%で資金供給する方針を打ち出した。中央銀行が担当すべき政策か、効果と副作用はどうか、よく検討すべきだ。本務である物価や金融システムの安定による国民経済の健全な発展と、気候変動対応の資金供給が常に整合的とは限らない。黒田東彦総裁は、本務を優先する姿勢だが、明確な整理が必要だ。本来は財政や政策金融に委ねるべきことに、中央銀行がどの程度関与すべきか議論を深めてほしい。

産経新聞

東京五輪開会式 世界を変える大会に育て 選手に静かな声援を送ろう』

東京オリンピックが1年の延期を経て原則無観客での開会となった。逆境の中でも、聖火を守らなくてはならない。閉会時には東京で開催されてよかったと、世界に思われたい。われわれ国民も、映像に小さくとも心をこめた静かな応援を送ろう。政府と自治体には、人流の抑制とワクチン接種の迅速化を徹底してほしい。産経新聞は、「開催への努力をあきらめるな」と書き続けた。その努力は、ウイルス封じ込めへの施策と同義と信じるからだ。厳しい環境下において、平和と団結の姿をスポーツの力で明示する。そうした世界を変える大会に育てば理想的だ。

東京新聞

『五輪開幕に考える 「民」はどこへ行った』

東京五輪の無観客映像を目にし、よみがえる四十年前の記憶があります。私ども中日新聞社の社説です。八十八年夏季五輪で韓国ソウルに敗れた「幻の名古屋五輪」への論評でした。当時、日本経済は低成長、財政難でした。五輪を誘致し地域振興を有利に運ぶ目論見でした。だが、「何のための五輪か」というまともな理念がなく、説明もない。「一事が万事これ式で『よらしむべし、知らしむべからず』ではたまらない」。得た教訓は「民主主義の原点を忘れた思い上がりの運動は結局成功しない」ということでした。ひとたび選挙で権力を手にすれば、あとは民意との信頼関係は遮断され、批判の声は国民が忘れるのを待たばいい。ここ何年も目の当たりにする「民」なき政治の不条理です。五輪優勢の失策も、五輪選手の活躍で、忘れてくれるとの読みがあるようです。いろいろあったこの東京五輪を奇貨とし、私たちは忘れぬことで、真の民主主義の底力を示し、ついには「封建時代の原理」をおわらせなければなりません。

毎日新聞

『コロナ下の東京五輪 大会の意義問い直す場に』

これほど開催を疑問視されたオリンピックは戦争時を除いてなかっただろう。選手たちは、開会式で歓声が響かない中で入場した。コロナは、ナショナリズムと商業主義で肥大化した五輪から「祝祭」という虚飾を剥ぎ取り、実像を浮き彫りにした。これまでに費やされた費用は関連費用を含めて、総額3兆円を超える。国内では、中止や再延期を求める意見が大勢を占めた時期があったが、IOCは開催ありきの姿勢を押し通し、反発を招いた。近代オリンピックの創始者であるフランスのピエール・ド・クーベルタン男爵は、1952年の演説で、「商取引の場か、それとも神殿か! スポーツマンがそれを選ぶべきである。あなた方はふたつを望むことはできない」と語った。東京五輪の大会ビジョンは「多様性と調和」だ。組織委では人権意識を欠いた発言や所業で辞任や解任が続き、世界からは厳しい目が向かれた。今こそ原点に立ち返り、五輪の意義を問い直す機会にしたい。

読売新聞

『週休3日制 働き手が不利にならぬように』

選択的週休3日制を取り入れる企業が増えているという。政府は骨太の方針で、希望する従業員が週休3日で働ける制度導入を企業に促すことを盛り込んだ。労働者が働きやすい環境を整えねばならないのは確かだが、人件費抑制などの企業側の都合だけで導入を急ぐようなことがあってはならない。多様で柔軟な働き方の実現には、労使が知恵を出し合うことが不可欠だ。政府は、多角的な観点から、時代にあった働き方を研究してほしい。

東京五輪開幕 苦境でも輝く選手に声援を』

新型コロナウイルス流行の苦境下で、東京五輪が開幕した。開会式は、感染防止のため無観客となり、選手はマスクをし、間隔を空けて入場した。開会式を巡っては、演出担当者や演出責任者、音楽担当者が相次ぎ辞任、解任となった。大会組織委員会は、式典の意義をどう考え、どう人選したのか、検証と説明が必要だ。円滑な大会運営に注力してほしい。選手たちには、これまでの努力の成果を発揮してほしい。選手たちの活躍は、世界に彩りを与えてくれはずだ。